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創作の裏側 「スケッチから作品へ」

私にとってスケッチは新たに作品にすることを前提として描きます。

一枚目は冬の厳しさから少しずつ春へと向かう頃のスウェーデンでのスケッチです。まだ雪が残っているなかで描いたものです。そこからスケッチしたものをいったん「ねかせ」ます。すぐに作品に繋がるものもあるのですが、たいていの場合は一度離れてみるということをします。その間自分の感覚や絵を描く視点、技法的なところが少しずつ変化してゆく中で、ふと「あの時のスケッチを作品にしてみようか」という瞬間があるのです。

スケッチ1

スケッチ1
写真は極力使わずに現場のスケッチやクロッキー、気にとめたことなどを文章として絵の中に書きとどめたりします。さしずめ「現場取材」といったところでしょうか。

スケッチ2

2枚目は後日同じ場所を描いたものです。スケッチも兼ねて改めて構想を練ろうと描いた一枚です。この日は天気も良く、雪もとけて暖かな春の陽気にあふれていました。その時にこの建物が「長くつしたのピッピ」や「ロッタちゃん」シリーズなどで知られるアストリット・リンドグレーンのサマーハウス(別荘)だということを知りました。

後日あらためてスケッチを見直すと非常に新鮮です。その時の空気や感情が思いだされます。何よりそこに残っている色は「現場での色」です。間を空けることで冷静に自分のスケッチを見直せますし、制作する過程の中でまた違ったものになりそうだという予感もあります。

スケッチ2
手前に無造作に置かれた椅子が作品づくりへのヒントとなりました。

そして作品へ

作品へ

この時の雰囲気と彼女のサマーハウスにインスピレーションを受けて描かれたのが、3枚目の作品です。登場人物(アストリットなのかもしれないし、この作品をご覧になっている方なのかもしれませんね。)は実際にこの画面内にはいませんが、その存在を感じるような作品をイメージしました。具体的な技法やツールなどは雰囲気を出すために必要なものを選んで使いました。1枚目から見てみると作家の中で様々な変化やインスピレーションを経て作品になったと思います。何より、最初のスケッチがとても貴重です。どのようになるかはその時はわからなくても、自分のアンテナにかかったものは描きとどめておこう。そう思います。

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